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F 日仏「おもてなしの心」にため息  - ホームパーティーと茶の湯の精神 -

ご存知の通りフランスには自宅に友人を招いて食事をもてなす習慣がある。 私もしょっちゅう招いたり招かれたりしているが、典型的な日本人である私は、初めてのお宅だととても緊張してしまう。こちらでの暮らしがどんなに長くなっても、これだけはどうも苦手である。

ホスト夫婦はいつもお客を笑顔で迎え、玄関でまず挨拶、リビングルーム等に案内された後、通常男性の方が食前酒を用意し、その間女性がお客の話相手をする。お客の緊張をほぐす様に、気楽に寛いでもらえる様に会話を進めていく必要があるのだが、フランス人はこれが天才的に上手い。お客との新密度や年齢、性別等を考慮しつつ、お客がその場にすっと入っていける様な雰囲気を創るのは、お客への敬いであり、まさしく「おもてなしの心」である。お客はその心のお陰で、段々とその場に溶け込んで行き、メインイベントの食事の頃にはすっかりリラックスしているのだ。

ところでこの前日本へ帰国した際に、夫と共に表千家の茶道の先生宅にお招き頂いた。冬期で外はすっかり暗くなっている時間帯だったのだが、先生は電燈の代わりに蝋燭の火を灯されお手前をされた。蝋燭の火は美しく、お茶室の中に「私たちだけの」世界が創られ、コチコチに緊張していた夫も、無作法で小さくなっていた私も、自分が取り戻せた様な気分になった。そして先生のお手前の素晴らしかった事。寸分の狂いもないお手前なのに、包み込まている様な優しさが伝わって来て、心の底から寛がせて頂けた。これも又、究極の「おもてなし」だった。日本に住んでいた時からお茶会等には何度も参加させて頂いた事があるが、こんな気持ちになったのははじめての事だ。

この様な気持ちになれたのは、パリ生活の中で何度もフランス人のおもてなしを受け、癒されてきたからだと思っている。フランス人の「おもてなしの心」は子供の頃からの教育とキリスト教文化を基盤とした長い伝統から培われてきたものである。簡単に真似の出来る事ではない。 しかし、日本にも「茶の湯」という素晴らしい「おもてなしの心」の伝統があるではないか。若い世代の方々には、茶道というと堅苦しい作法の面だけが目に付くのかもしれないし、残念ながら、一般的に茶道の諸先生方もその辺ばかりを宣伝されておられると思う。茶の湯の精神の基本はおもてなしの心であり、作法や道具はそれに必要な媒体なのだと思う。作法や道具だけがひとり歩きする事はないはずである。

フランス式の食事マナーやエチケット、おもてなし法を勉強する事も大切だが、茶道からも学べる事は沢山ある。お客への敬意、寛ぎの時間と空間を提供する事、はじまりと終わりが大切な事、全てフランスでのホームパーティと日本のお茶会に共通している。何もフランス人の真似をする必要はない。日本は遥か昔から「おもてなし」を実行していた、「おもてなし先進国」だったのである。私もこれから出来る限り茶道の勉強をさせて頂き、フランスの社会の中で活かして行きたいと思っている。

 
   

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