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D オバサンと呼ばせない文化にため息 -
「 マダム」は自立した性への尊称 -

日本の婦人雑誌を見ていると、「マダム」という呼称が、流行の言葉で言うと「セレブ」な既婚女性に対して使われている。日本人にとってマダムという言葉の響きは特別で高級な物なのだと思うし、そのイメージを利用して日本社会の中で中高年女性の発言権が強くなっていくのはとても良い事だと思う。私も中年世代に近づいてきてしみじみ思うのだが、日本の社会の中で中高年女性は「オバサン」という呼称に代表される通り、ある意味で軽んじられている存在だから。しかし、うわべだけのイメージに踊らされるだけでは「オバサン」を取り巻く環境は変わらないと思う。

御存知の通り、フランスでは既婚、未婚に関わらずある程度年齢を重ねた女性への呼称は全て「マダム」である。職場等では、未婚で若い女性でも「マダム」と呼ぶ。見るからに 10 代や 20代前半で子供子供した人なら兎も角、特に一人前に仕事をしている女性に対して「マドモアゼル」と言うのは失礼に当たるそうだ。勿論彼女が「マドモアゼル」と呼ばれたければそう主張しても構わない。お店などに行って若い女性店員さんがいても「ボンジュール、マダム」と挨拶する方が、マドモアゼルと言うより礼儀に適っているのだ。「マダム」は、「自立した性」である女性に対する尊称だと私は理解している。

フランスではどんな小さな子供でも、どんなに不良っぽい男の子でも必ず女性を「マダム」と呼ぶ。「オバサン」に相当する言葉はフランス語にも勿論存在するが、相当な俗語として定義されているので、余程の事がない限りその言葉は使われない。万が一使われたとしても、呼ばれた本人は絶対に返事しないだろう。そんな蔑称を「呼ばせない、使わせない!」という気概がフランスの女性には感じられる。フランス人が日本で吃驚する事のひとつに、レストランやお店で、働いている女性に「オバサン!」と呼びかけ、呼ばれた本人も「はあい」と返事する事がある。

「オバサン」と呼ぶ方は勿論悪いが、呼ばせておく方も悪い、とあるフランス人は言っていた。正にその通りだと思う。「オバサン」というのは特別蔑称ではないと思うし、親しみを持ってそう呼ぶ人もいると思う。では何と呼べば良いのか?日本では若い女性には「お嬢さん」と言うある程度のレベルの尊称があるが、30代以上の女性には「奥さん」だろうか。昔は、お嬢さんから奥さんへの道を辿るのが日本女性の正道だったのだろうが今は違う。年齢を重ねても未婚の女性は多いし、夫婦別姓の人、同棲はしても結婚しない人、又、結婚していても「奥さん」とは呼ばれたくない人も多いと思う。かくいう私もそのひとりである。日本語には「自立した性」に対する尊称が存在しないのだと思う。だから「オバサン」、という蔑称ではないが何とも奇妙な呼称に落ち着いてしまい、呼ばれる本人も惰性で気にしなくなってしまうのだろうか。

日本には日本の文化があり、フランスにはキリスト教を基にした異文化がある。元来の日本女性の社会的立場を考えるとそういった尊称が存在しないのは当然である。しかし、女性の生き方が多様化した現在、「オバサン」や「奥さん」という呼称でしか呼べないのは余りに悲しい事ではないだろうか。日本の社会の中で、又話し言葉としての日本語の特質を考えると、「マダム」に相当する尊称を創出し使用していく事はとても難しいと思う。

だが、せめて公共の場で「オバサン」を連呼するのは止められないだろうか?そして何よりも女性自身がそう呼ばせない様にする事だ。そう呼ばれても返事をしない。それで文句を言われたり絡まれたりしても断固として拒否する!本人が「私はオバサンだから」と言って、「責任回避」するのはもってのほかである。


 

 
   

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