@ 「プロ」の仕事にため息 −Marche des Batignolles-
96 bis rue Lemercier 75017 Paris

私はプロ意識を持って仕事をしている人を心から尊敬する。自分自身も不動産業のプロとして、プロのビジネスウーマンとして日々研鑽しているつもりだが、プロとしての誇りと向上心に満ちた人々と触れ合う事をとても大切に思っている。

私がいつも買い物をする17区のMarche des Batignollesは、プロの商人たちが厳しい目で選んだ良質の食品が揃っている。私は17区のこのエリアに魅せられ、パリに来て以来ずっと住み着いているのだが、その魅力のひとつはこのマルシェなのだ。商店街の中で育った私は野菜は八百屋で、魚は魚屋で、という事に固執していて、この辺りに住み始めて直ぐ当然の様にこのマルシェに足を踏み入れた。今では私にはなくてはならない所となっている。私の心のオアシスであり、プロたちの話に刺激され、励まされ、活力を与えられている。

鶏肉を扱うマルセルさん。大手スーパーの肉売り場や大型肉屋での勤務を経て、「どうしても自分の目で選んだ良質の鶏肉を売りたい!」と言う願いが諦められず50歳を目前にしてこのマルシェ内に店を持った。彼の扱う鶏肉は全て地鶏、つまり放し飼いによって成育された最良質のものばかりだ。一口食べればブロイラー育ちの鶏肉とは雲泥の差、鶏肉本来の旨みがじわーっと広がる。「でもね、常顧客を獲得するのには開店から2年かかったよ。ほんと、大変だった」とマルセルさん。当時は質より量が求められより安い鶏肉を求める傾向が強かったそう。それでも彼はブロイラー肉や安い輸入肉を扱う事を断固拒否し安全で美味しい鶏肉を提供し続けた。今では近隣隋一の専門店として遠くからも買いに来るお客が絶えないとか。彼のこだわりとプライドには脱帽するのみだ。

魚介類を扱うステファンさん。まだ20代の若さだが既にプロとしての知識と貫禄は十分。
野菜専門の商人だったご両親に反発して他の仕事をやった事もあるそうだが、やはり「自分に合っている」と痛感し、好きな魚介類を扱うこの仕事を選んだ。
彼のスタンドには厳選された魚介類が並び、金曜、週末ともなると常に10人以上の顧客が順番待ちの列をつくる。そのお客さんを彼は寸分の狂いもなく、しかもとても丁寧に裁いていく。フランス人、特にパリジャンは気が短い人が多いのであまり列が伸びると諦めて退散したり他へ行く人も多いのだが、彼のスタンドでは皆大人しく順番を待っている。商品の良さだけでなく、彼にアドバイスを求めてやってくるお客さんも多いのだ。つまり彼の接客や知識も商品の一部なのである。
彼はそのお客さんがこの前何を買ったかを克明に記憶していて、「この前のカレイ美味しかった?」等とさりげなく聞いたりする。今、フランスでは若者が怠惰だとか無礼だ、等という悪評が絶えないが、彼を見ている限りそれは余計な心配の様だ。

野菜、果物を扱うソフィーさんとその家族。フランスでも季節を問わず一年中同じ野菜が出回る様になって久しいが、彼女のスタンドでは季節のもの、しかも有機栽培のものしか扱わない。値段も良心的で新鮮さは他の店とは比べ物にはならない。その野菜の一番美味しい食べ方も詳しく教えてくれる。「家族以外の人はこのスタンドで働いて欲しくないの。時には時間を度外視して働かないとうちの商品を楽しみにしてくれているお客さんの要望に答えられない。給料で働いている人には無理でしょ。」、とソフィーさんは言う。経営者としての彼女はシビアである。でも、
私が疲れた顔をしていたりすると「ビタミンは疲れにいいのよ」と言いながら、さりげなくさくらんぼやイチゴを渡してくれたりする。
大きなスタンドを切り盛りし、朝から晩まで休みなしに働く正真正銘の「キャリアウーマン」、そして逞しい母、心優しく可愛い女性であるソフィーさんに私はいつも励まされている。

 
   

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